二天一流 野田派

ご挨拶

二天一流杉並会 師範 一川英機(剣道教士七段)

流祖・新免武蔵藤原玄信、宮本武蔵先生は寛永17年(1640年)に熊本藩主細川忠利候に迎えられ、それまで修行したものを集大成し、兵法35ヵ条からなる極意書を作り提出しました。これが後に書いた「五輪書」の原本となり、二天一流が生まれました。二天一流には 野田派・山東派・水尾派の三派があります。我々が継承しているのは「野田派」です。 野田派二天一流の第十七代師範は、私の父である剣道範士八段一川格治でした。一川格治師範以降は特定の個人ではなく、「熊本県剣道連盟」がこの流儀を継承しています。二天一流杉並会もまた野田派の流儀を継承し、稽古を行っています。
二天一流の思想の頂点は「実相円満之兵法逝去不絶」の一語に尽きます。この意味は「剣の目的は人を斬るだけでなく、実の姿は円満で慈悲愛隣を含んでおり、私が死んだあとも絶えることがない」ということです。武道の極意は今が出発点であり、そこに執着して滞ってはいけません。繰り返しが修行なのであります。極意は、「朝鍛夕練」(チョウタンセキレン)して習う者が得るのです。「五輪書」の巻の最後には必ず「よくよく鍛練在るべきこと」「よくよく吟味在るべきこと」と書いてあります。鍛練とは千を鍛と言い、万を練と言い、鍛練とは千万回のことです。
先師の言葉のなかに「天下無敵」という言葉があります。これは強いということではなく、天下に敵を作らないこと、己の心に敵を作らないことです。敵を作らなければ戦う必要がないのです。私は二天一流を継いでおりますが、過去から引き継いだものを、現代においてどう活かし、それを次の時代にどのように伝えて行くか、その方法と内容の充実が大切だと思っています。我々は民族としても、あるいは個人としてもリレーの選手のようだと思っています。私は私の持ち場を一生懸命走る、そして上手に次の選手にバトンタッチをするその役割りを充分に果たしたいと思っております。

二天一流杉並会 会長 町田輝雄(剣道教士七段)

二天一流杉並会では、主として二天一流野田派「五方の形」を、また折に触れて武蔵流「一刀太刀の形」を学んでいます。いずれも流祖(新免武蔵藤原玄信)から第十七代(一川格治師範)を経て一川英機師範へと受け継がれたものであり、私たちはこの流儀と口伝の数々を継承し、次の世代へ正しく伝えることを目的に日々稽古に励んでいます。
形(かた)の真理はその形(かたち)の内にあります。それゆえ形には如何なる変更も加えてはなりません。真理の体現には技法・心法を含め、長年にわたる鍛錬が必須であることを肝に銘じ、拙速な見解や浅薄な解釈を慎み、ただひたすら師範の指導どおりに形稽古を積むことが流儀の存続に繋がるのです。僅か五本の形ですが、練度に応じて新たな発見があり、形の奥深さを実感できます。また体得した理合や理法を竹刀剣道に応用できます。さらに『兵法三十五箇条』『五輪書』『独行道』の真意へと具体的に接近する道が開かれます。
武蔵先生は二つの姓を使い分けていました。剣術の流儀には「新免」、家系には「宮本」です。一川英機先生は当然のことながら新免に属しますが、これに加えて2017年には平田冨峰先生(剣道教士八段)が入会されました。平田先生は平田将監のご子孫で、武蔵先生の血筋を引く人物です。これによって当会は武蔵先生の流儀と家系が揃った、類い稀な、いわば奇跡的な出会いの会へと成長しました。こうした剣縁に感謝しつつ、流儀の伝承に寄与するために、私たちは今後もなお一層の精進を続ける所存です。「実相円満兵法逝去不絶」。
当会では随時入会を受け付けています。ご興味のある方は事務局に連絡の上、ぜひ見学にいらしてください。武蔵先生の遺産を多くの方々に学んでいただければ幸いです。

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